画家小倉宗氏の札幌時計台ギャラリーでの個展のハガキが届く。小倉氏は岐阜県大垣市に住んでいて、札幌の知人(画家佐藤武氏)に個展の準備等を依頼しているようで、本人は札幌までは来ないかも知れないと思っていた。以前にも同様な個展があって、会場で姿を見ることがなかったのが記憶に残っている。
今回(2015年11月)も個展の二日目に行ってみて、会場で小倉氏が来札されていないのを確かめる。しかし、あるいはと思って最終日にもう一度会場に出向いてみると小倉氏が居られる。小倉氏と知り合いになった20年以上も昔の、このギャラリーでのお互いの展覧会に話が及ぶ。
1993年の2月に筆者は「青木由直・岡林茂二人展」を前述のギャラリーで開催している。この時向い側の部屋で個展を行っていたのが小倉氏で、これが同氏と知り合うきっかけになっている。今回小倉氏と昔話をしていて、この年を小倉氏は正確に覚えていた。小倉氏にとっては記念すべき個展であったとの話である。なお、筆者の方の二人展の岡林氏は既に故人となられた。
小倉氏は1959年生まれの大垣市出身(出版された絵本にある著者経歴では北海道厚田村出身だが、小倉氏の口からは大垣市出身)である。1993年の個展を開いた頃は厚田町に住み、塗装業(ペンキ職人)で生活していた。北海道に来たのは小倉夫人が北海道の人だったことによるのか、北海道に来てから結婚されたのかその辺について詳しくは聞いていない。ただ、北海道で仕事を探すとペンキ職人の求人が多くて、それに決めて来道されたそうである。ペンキ塗りの仕事の合間に絵を描いていた。
厚田町(現在は石狩市)から出身地の大垣市に戻ってからの仕事は、しめ縄の卸の営業である。定時に仕事が終わるので、絵を描くのには適した職であると話しておられた。因みに毎日の平均で出勤前に2時間、帰宅後に2時間の計4時間は絵を描いているので、これまでかなりの枚数を描いてきている。小倉氏はアクリル画で、乾きが速いことも量産の手助けになっている。これまで2000枚ほど描いていて、そのうち500枚は売れている、というからもうプロの絵描きである。
絵を描く人との会話では、絵を描いて生活ができるか、否それは無理だろとのお決まりの話になる。小倉氏には絵に関連した特技があり、これが絵を売ることにつながっている。それは額の手作りである。小倉氏の絵は全て小倉氏手製の額に納まっている。特にペンキ職人であったので、その技術を生かして額の仕上げの塗装をプロ並みのものにできるそうである。手作りの額であるため、額付きの絵の値段を抑えることができ、販売につながる。
小倉氏はこれまで絵本も出版している。「じゃんけん戦争 あっちの国こっちの国」(新風舎 2005年7月)があり、出版後に1冊送られてきた。絵本の著者の略歴に「北海道原田村出身」とあるのは「厚田村」の間違いだろう。絵本に載っている経歴には「絵本にっぽん新人賞」(1991年)、「岐阜県美術展県展賞」(1996年)が記載されている。12支マイカレンダーの絵も担当されていて、このカレンダーが送られてきたこともあった。このこともあり、今回お会いした時、筆者が制作に関わった「パノラマ写真で記憶する北海道の鉄道」の2016年カレンダーを進呈した。
小倉氏の絵は独特なもので、一目で小倉氏の作品とわかる。小倉氏に同じような画風の他の画家が居るかとたずねたら、居ないだろうとの答えなので、どこかで小倉氏の展覧会があったり、作品が飾ってあれば迷うことなく小倉氏の名前が出てくる。最近は年に5,6回は全国で個展や展示販売会が行われていて、結構忙しいらしい。
(札幌時計台ギャラリーで 2015・11・14)
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